お口の中の細菌
口の中の細菌について
口の中は生まれた時は無菌状態です
そして、間もなく、母親や、周りの人たちから細菌などの病原体が侵入し、口腔常在菌として、住み着いてしまいます。この病原体は健康な人の口の中では、“共生”と言って、宿主に影響をあまり与えることもなく、生きています。
しかし、“歯みがき”などの口のなかのお掃除を怠ると、異常増殖し、歯と歯ぐきの間の溝(歯肉溝)などに、肉眼でも見られる歯垢を作ります。
歯垢1ミリグラムには1億以上の細菌などの病原体が住んでいるのです。これは、糞便よりも、高密度の細菌といえます。これが、むし歯、歯周病さらには、糖尿病、脳梗塞、心内膜炎、新生児早産、誤嚥性肺炎などを誘発するのです。
口の中の細菌の特徴
1) 体の他の臓器に移動しやすい。
口の中の細菌は、誤嚥により、肺に侵入し、肺炎を起こします。
また、肺炎はたびたび起こると、小さな血液の塊が心臓を経由して、脳に飛び、脳梗塞を起こすといわれています。
さらに、出血を伴う歯科治療を受けると、菌血症を起こすので、献血が3日以内は出来ません。
2) 細菌は、口の中の細胞にくっつきやすく、細菌同士もお互いにくっつきやすい。
みがき残しである、“歯垢”はこうやって作られます。
カビの一種であるカンジダ菌はとくに粘着力が強いです。
むし歯の原因菌である、ミュータンス・レンサ球菌は砂糖から、粘着性のグルカンを作り、歯周病関連菌のジンジバーリス菌も、くっつく力が強い菌です。
3) 歯周病関連菌ジンジバーリス菌は血液を好みます。
ジンジバーリス菌は血液中の鉄イオンを獲得し、血小板に結合します。
そして、血液中に入り、全身を循環しやすいと言われています。
4) 免疫反応に影響を与え、さまざまな臓器にダメージを与えます。
むし歯や歯周病の原因になるだけでなく、細菌自体が増殖しやすいように免疫機能に抑制をかけていく。
これによって、心臓や動脈壁など、さまざまな臓器にダメージを与えます。
インスリンの情報伝達を邪魔し糖尿病を誘発させたり、インフルエンザウイルスの感染率も高めることが知られています。
細菌が起こす炎症反応は歯周組織を破壊します
細菌が粘膜に侵入しますと(細菌感染)、炎症反応が起きます
炎症反応は、血液中の白血球の中に含まれる顆粒球(好中球)や、単球(樹状細胞、マクロファージ)から分泌される“炎症性サイトカイン”、同じく白血球中に含まれる顆粒球(好塩基球)、肥満細胞などが分泌する“ヒスタミン”、同じく白血球中に含まれる単球(マクロファージ)から分泌する“TNF-α”などのケミカルメディエーターが細菌を殺すのと同時に組織も破壊していきます。
歯周病の進行も、歯周病菌の増加、繁殖によって、炎症反応が起こされ、細菌自体の毒素と同時に歯周組織が“戦場”となり、歯ぐきが腫れたり、膿が出たり、骨が溶かされたりして、起きるのです。
そして、ケミカルメディエーターも、細菌とともに、全身を巡り、糖尿病などの全身疾患を誘発させるのです。
なお、好中球の活性酸素の増幅も、細胞・組織破壊を進行させます。