糖尿病と歯周病
歯周病は糖尿病の合併症
歯周病は、網膜症、腎症、神経障害、小血管障害(主に下肢の血行障害)、大血管障害(脳梗塞、虚血性心疾患、閉塞性動脈硬化症)などに次いで、糖尿病の6番目の合併症とされました。=ハロルド・レー(1993年)
糖尿病はサイレントキラー(沈黙の殺し屋)と呼ばれるように、自覚症状がないまま進行するのが大きな特徴で、怖さはこれらの合併症にあります。
糖尿病の人が歯周病になりやすい原因
- 血糖値がかなり高くなると、歯周組織にも糖分が増え、歯周病菌繁殖の栄養源になります。
- 糖尿病で、免疫力が低下することから、歯周病菌に対する抵抗力が不十分になります。
- 殺菌作用をもつ唾液の分泌量が減るため、歯周病菌が繁殖しやすくなります。
- 微小血管での循環障害により、傷ついた組織の再生や感染防御能力が落ちます。
- 歯肉を構成しているコラーゲンを壊す酵素が増えるため、相対的にコラーゲンの量が減少し、細菌が侵入しやすくなります。
- 歯肉の炎症に伴い、骨の吸収に関わっているTNFーα(サイトカインの一種)の量が増え、歯槽骨(あごの骨で、歯を支えている部分)が吸収(溶けて)します。
歯周病が糖尿病を悪化させるって本当?
歯周病が糖尿病を引き起こすわけではありませんが、歯周病を治療せずにそのままほうっておくと、炎症によって生じるケミカルメディエーターの量が増え、全身に広がります。
そして筋肉細胞や脂肪細胞に作用して糖の代謝機能を妨げます。さらに、肝臓の働きを鈍らせ、グルコース(ブドウ糖)の代謝を低下させます。
こうして歯周病は、血液中の糖の濃度を下げるホルモンであるインスリンを作用しにくくさせ、糖尿病は悪化傾向をたどっていきます。
しかし、歯周病をきちんと治療することによって2型糖尿病も改善されます。
また、血糖値を改善させることは歯肉の改善にもつながります。
糖尿病は歯周病を悪化させるって本当?
歯周病は糖尿病を悪化させますが、糖尿病により、歯周病も悪化することが多いです。
糖尿病の合併症として、網膜症・腎障害・神経障害・血管障害が知られていますが、さらに、歯周病も合併症のひとつと考えられるようになってきました。
この理由として、高血糖があげられます。血液中に糖分が多いと、ヒスタミン、プロスタグランディン、炎症性サイトカインなどのケミカルメディエーターを過剰に産生してしまい、歯周組織を破壊し、機能を弱らせ、その結果、歯周病菌に対する歯周組織の抵抗力を低下させてしまう傾向にあります。
また、高血糖は歯肉の弾力性を保つコラーゲン線維の成分を減らすこともわかっています。
こうして、糖尿病の患者さんは歯周病にかかりやすくなり、すでに糖尿病にかかっている人は状態が悪化しやすくなるのです。
糖尿病の基礎疾患をお持ちで歯科治療を受けられる方へ
糖尿病の既往があり、歯科治療を受けられる場合、歯科治療時に偶発症が起こる可能性が高くなりますので、以下の点にご注意ください。
- 歯科治療を受けられる前に必ず、かかりつけの内科で、血糖コントロールを受けられてください。
- 歯科治療は外科処置が多く、、事前に抗生剤の服用が必要な場合が多いですから、必ず、受診前に糖尿病の持病があることを、担当歯科医にお話しください。
- 予約は午前、午後の早めの時間帯におとりください。
- 治療時は空腹時は避けてください。
- かかりつけの内科の連絡先もお話しください。
以上、注意点をお守りください。
歯科治療は観血的処置(歯石除去や抜歯、歯周外科などの外科処置)が多いです。
血糖コントロールが不良の場合、歯科処置を行っても、炎症により症状が重篤化し、頚部に波及し、死亡に至った例もあります。
また、一旦炎症を起こしますと、歯ぐきの痛み、腫れなどは回復しにくく、時間がかかりますので、ご注意ください。
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