1.ヘルペス性口内炎<ウイルス性疾患>

ヘルペス性口内炎の口腔内所見 再発による口唇ヘルペス

初感染は生後6カ月以降の乳幼児に発症します。症状はとくに出ないことが多く、その後、ウイルスは三叉神経(顔面、頭頸部の神経)に潜伏し、疲労、ストレス、発熱等の免疫低下が誘因となり、口唇ヘルペスとして、再発します。

⇒安静と栄養補給とともに、口内炎による疼痛の軽減を目的とした対症療法が行われます。

二次感染の予防のため、抗菌薬の投与やうがい薬によるうがいも有効です。小児では、発熱による脱水に対して水分補給をしてください。

2.帯状疱疹<ウイルス性疾患>

帯状疱疹1 帯状疱疹2

水痘を初感染として、水痘治癒後も三叉神経節や脊髄後根神経節に潜伏感染します。感冒や疲労等の免疫低下時にこのウイルスが活性化し、神経に沿った皮膚、粘膜に片側性、帯状に並んだ小さい水ほうが発生します。
口の中には粘膜がびらん、潰瘍(上写真参照)になります。

⇒早期の抗ウイルス薬が有効です。

症状に応じて内服、点滴投与を行います。治療は安静と栄養管理、口腔粘膜や皮膚症状の管理、消炎鎮痛薬、ステロイド薬などによる、疼痛に対する管理が行われます。

3.天疱瘡<皮膚的疾患>

天疱瘡1 天疱瘡2

30歳~60歳代に多く、女性に多い。

びらん(皮膚や粘膜の表面がはく離し、下の層が見えた状態。ただれた状態)が主な症状です。

ほほの内側の粘膜や歯肉、口蓋によくみられます。

⇒治療の中心はステロイド内服療法です。早期に皮膚科へ行くことが大事です。

4.類天疱瘡<皮膚的疾患>

類天疱瘡1 類天疱瘡2

天疱瘡に比べて高齢者に多く、小豆大からピンポン球大まで、さまざまな大きさの水疱が全身に多発します。

皮膚症状が主体で、口の中では比較的軽度です。

⇒ステロイドの内服また、口の中では、ステロイド軟膏の塗布が行われます。

眼の症状がある場合には、眼科を受診してください。
5.カタル性口内炎

カタル性口内炎

歯肉、くちの中全体の粘膜が赤く腫れ、急性期には、強い焼けるような痛みや、刺激による痛みがあります。

数日から、数週間で自然に治癒することが多いですが、たまに、重症化し、壊死性潰瘍性口内炎に移行することもあります。

歯ブラシによる口腔清掃が十分でない場合、疲労、感冒、体調不良などが原因とされています。

⇒治療は原因に除去、口腔内清掃二次感染の予防等が中心です。

6.アフタ性口内炎
アフタ性口内炎1 アフタ性口内炎2

一般的に通常もっとも多くみられる口内炎です。アフタは直径2~10ミリ程度の円形の潰瘍です。

原因は不明です。再発性アフタとベーチェット病に分類されます。

①再発性アフタ  発生頻度は全人口の20パーセントといわれ、20歳~30歳代に多くみられます。男性よりも、女性に多いです。

②ベーチェット病 原因不明の全身性炎症性疾患で、多臓器侵襲性の難治性の疾患です。

ベーチェット病のアフタは通常より大きく深い潰瘍を形成する傾向にあります。

7.扁平苔癬(へんぺいたいせん)

扁平苔癬(へんぺいたいせん)  びらん型の扁平苔癬

扁平苔癬は、免疫反応が関与する難治性の炎症性の病変です。

前癌状態と位置づけられています。前癌状態とは、癌発生の危険性が有意に増加した状態で、前癌病変とは異なるもので、癌化率も低いとされています。

ただし、扁平苔癬は白板症や紅板症との鑑別が困難で、臨床的に扁平苔癬と診断して行った生検のなかに、前癌病変が含まれていることがあり、厳重に経過を観察する必要があります。

8.薬物性歯肉増殖症

薬物性歯肉増殖症は、歯肉炎や歯周炎の一般的な臨床症状である歯肉の腫れとは違った、薬の副作用によって生じる歯肉の増殖です。

1.フェ二トイン(アレビアチン)

薬物性歯肉増殖症

抗てんかん薬であるフェト二ンの長期による服用により、歯ぐきが増殖します。

てんかんの患者さんは、幼少期から、長期にわたり服用されていますので、歯ぐきの増殖が重篤で、歯と歯の間も離れてしまっていることが多く、早期からの口腔衛生管理が必要になります。

2.二フェジピン(アダラート)=カルシウム拮抗剤

二フェジピン

高血圧症や狭心症治療薬として使用されているカルシウム拮抗剤である二フェジピンの長期にわたる服用により、歯ぐきの増殖が起こります。

このほか、アムロジピン(ノルバスク)、マ二ジピン(カルスロット)、ジルチアゼム(ヘルベッサー)などの薬剤も同様です。

3.シクロスポリン(サンディミュン)

シクロスポリン(サンディミュン)

免疫抑制剤で、皮膚疾患、ネフローゼ症候群、ベーチェット病などで処方されます。

9.骨隆起

口蓋隆起 下顎隆起

骨隆起とは、骨質の局所的過剰発育によって生じる、非腫瘍性の骨の隆起です。腫瘍性でも、炎症性でもないので、そのままにしていても、とくに心配はありません。長期にわたる、噛みしめ、くいしばりなどが、原因と考えられます。

できる場所はだいたい決まっていて、上顎の内側の真ん中(口蓋部)と下顎の小臼歯の内側によくみられます。