子どもの歯並びと指しゃぶり
もくじ
子どもの歯並びと指しゃぶり
指しゃぶりは生後2〜3カ月ころからよく、見られるようになります。
この頃は、口の感覚が最も周りの物を知る手段なので、何でも口に入れて確かめようとします。
この時期の乳児期の指しゃぶりは、反射的、本能的なもので、口を動かす練習をしているのです。
ですから、“自然な行為”として心配はいりません。
幼児期になると、言葉によって自分の気持ちを伝えられるようになるため、指しゃぶりの必要性はなくなっていきます。
それにもかかわらず、指しゃぶりが幼児期になっても継続している場合は、以下の理由が考えられます。
子供が指しゃぶりをしてしまう原因
まず、指しゃぶりが癖になって、無意識にやってしまう状況。
次に、ストレスや緊張に対して、指しゃぶりをすることによってセルフコントロールをしている状況の2つが主に考えられます。
いずれにしても、3歳くらいまでは、指しゃぶりをしているお子さんは多く、心身の発達、周囲の環境への慣れとともに徐々に少なくなっていきます。
就寝時の指しゃぶりなど、癖的な指しゃぶりで、多くのお子さんに見られますが、お子さんが眠るまでお母様が手を握っていてあげるのも効果的です。
幼児期後半になりますと、言葉の発達も進み、保育園や幼稚園などのでの体験などをとおして、友達や他の人たちとの交流も深まり、社会性もはぐくまれ、徐々に指しゃぶりは減っていくものです。
友達との交流は、生活の充実、社会性の向上につながり、お子さん自身で“指しゃぶりを止めよう”という意識につながっていきます。
ただ、3歳を過ぎての指しゃぶりは歯並びにも影響がでてきますので、止めさせようと、対処していくことは必要です。
指しゃぶりの歯並びへの影響について
1〜2歳半の幼児期前半は比較的歯並びに影響が出ることは少ないです。
しかし、しゃぶり方やしゃぶる時間が長ければ、上の前歯が前に出てきたり(上顎前突)、奥歯の歯並びが狭くなったり(狭窄歯列弓)してきます。
3歳も近くなった頃、奥歯が全部生えそろったときに指しゃぶりが長時間続きますと、徐々に前歯が前に傾斜し始め、歯並びが影響を受け始めます。
上あごの歯並びのアーチが指を吸いこむときほっぺたの筋肉を収縮させるので、狭いアーチ(V字歯列弓)になってきます。
3歳を過ぎても指しゃぶりが続きすと、噛み合わせの状態も変化してきます。
上下の歯をカチッと噛み合わせたとき、上下の前歯の間に隙間ができてしまい、前歯を噛み合わせ出来ない状態=開咬(かいこう)の状態になります。
こうなってしまうと、上唇もまくれ上がって、“お口ポカン”の状態になり、口呼吸になっていきます。
さらに、上下の前歯の間から舌も吐出してきて舌癖(ぜつへき)も誘発します。
そして口元も出てきて、顔貌にも変化が表れます。
5,6歳の永久歯の生え代わりの時期にまだ、指しゃぶりを続けていると、上顎前突、いわゆる上の歯が前に出た”出っ歯“の状態になります。 ・上顎前突になる原因は?(どうして出っ歯になる?)
ここで、上顎前突になる原因を挙げてみます。
- 1.口呼吸
- 2.舌の動き(飲み込み方)
- 3.姿勢
- 4.遺伝
- 5.寝相
- 6.指しゃぶり
以上となります。
やはり、一番多い原因は口呼吸、これはアレルギーなどによる鼻づまりが関係しています。
次に多いのが、舌を前方に出す飲み込み方、これは上顎前突の殆どのお子さんがやっています。
あとは、姿勢の悪さ、猫背になっていると、下顎は後ろに下がり、相対的に上
これらからしますと、指しゃぶりも、前歯が生え替わる6歳前後まで継続すなければ、歯並びにそんなに影響はない、と考えられます。
指しゃぶりへの対処について
1.乳児期
乳児期の指しゃぶりは哺乳から、食べ物を自分で食べていくための移行期間であり、必要なものだと言うことができます。
ですから、身近なおもちゃも舐めても安全なもので、清潔にしておいてください。
子どもの成長過程としてあたたかく見守ってあげてください。
また、長時間にわたる指しゃぶりは、授乳の問題もあるかもしれません。
授乳の時間が赤ちゃんにとって不足していることもありますので、時間やミルクの量を増やすなど、検討されてもいいと思います。
2.幼児期前半
この時期は“指しゃぶり”の原因を考えて対処していきます。
周りとのコミュニケーションが少ない、生活環境が合わないくてストレスがある、または、お子さんの性格的なものなど、よく考えてあげてください。
そして指しゃぶりを止めさせようとして、きつく叱るのはやめましょう。
仮に止めたように見えても、爪咬みなど、他の代償行為に走りがちです。
この時期のお子さんは、まだ、指しゃぶりを悪いことだとは思っていないので、さらに、隠れてするようになることもありがちです。
外に遊びに行く、手を使った遊びを教える、などお母さんとのかかわりのうちに、すこしずつ少なくなっていくことが多いです。
3.幼児期後半
この時期は、社会性が発達し、「指しゃぶりは恥ずかしいこと」という気持ちも出てきます。
ただし、実際に止められるかは、周囲の人たちのサポートが必要です。
そして、友達と遊ぶ機会を増やすなど、社会性の向上を目指します。
あと、習い事なども、無理がないか?親の押し付けになっていないか考えてみてもいいと思います。
指しゃぶりを止めようと頑張っているお子さんには、励ましの声掛けや応援をしてあげてください。
また、指しゃぶりについて、“良くないこと”と思っていないお子さんには、「指しゃぶりをしていると、こんなになるんだよー」と実際の絵や写真を使って見せてあげると効果があります。
当クリニックにも、“指しゃぶりによって変わってしまった歯並び模型”が用意してあります。
また、永久歯に前歯が交換しても、まだ、指しゃぶりを続けていると、永久歯の上の前歯が出てくる(上顎前突)、上下の前歯がかみ合わない噛み合わせ(開咬)、さらには発音障害にもなってしまいます。
当クリニックでの対処法
“指しゃぶりによって歯並びが悪くなった模型”を見せ、やさしくお話しします。
パナシールドというマウスピース型の装置を入れてもらう。
主に寝る時ですが、それ以外の家にいる時も最初はつけてもらいます。
前歯の永久歯が生えてきても指しゃぶりが継続しているとき、取り外し式の拡大装置をつけさせ、指をしゃぶりにくくする。
まとめ
指しゃぶりは、お子様の自己表現のひとつです。乳児期は成長発育の課程、幼児期前半は遊びのひとつ、幼児期後半はご家族全員の取り組みとして考えていくといいでしょう。
歯並びへの影響は、それほどありませんので、お子様とまっすぐに向き合っていくうちに、自然に無くなっていくことが多いです。