子どもの歯並び
もくじ
はじめに
近年、ここ20年の間に、子どもの歯並びが急激に悪くなりつつあります。
当クリニックを受診されるお子さま方、立川市の健診、小学校検診などからも、幼児期から学童期にかけてのお子様たちの歯並びの大きな変化を感じています。
たとえば、“歯並び相談”で来られるお子様がたの歯並び、噛み合わせの状態とご両親の歯並びを比べると、ほとんどの場合、お子様方の歯並び、噛み合わせの状態の方が良くない、ということは、近年の環境、食生活の変化の影響が考えられるのではないでしょうか?
さらに、従来、“歯並び”は遺伝的影響が強い、と言われて、それに基づいた矯正学的診断がされ、永久歯抜歯を原則とする矯正治療や外科手術が行われていましたが、現実的に、環境的影響も強い、とするならば、それで良いのでしょうか?
そして、その環境的影響とは、どのようなものがあり、それを知り、対処することにより、“歯並びは良くなる”のでしょうか?
このページはそれに対するヒント、答えの一つとして作ってみました。
立川の子どもの歯並び
私、近藤が歯科クリニックを立川で開業したのは25年前(平成8年)でした。
当クリニックにむし歯治療で来られる子どもたちには、歯並びは悪い人もいましたが、どちらかというと、歯並びに問題のあるお子さんは少なかったように思います。
立川市の幼児歯科健診(3歳)でも、子どもの歯(乳歯)がほぼ生えそろっている状況において、“歯並び”を気にされているお母様方はほとんどいませんでした。たまに、気にされているケースでも、実際には、とくに問題点は無く、そのまま経過を見ていれば良い状況でした。
ところが、最近はほとんどのお母様が“歯並び”を気にされていて、お子様の実際の歯の生え方も重なりが見られ、あごの成長が少ないお子様が多く見られるようになってきました。
また、小学校入学前後の、前歯が生えてくる状況においても、生えてきた永久歯の重なりが強く見られ、さらに、レントゲンを撮ると、これから生えてくる永久歯の向きや位置が良くない場合が多く見られます
さらに、乳歯が抜けても、その後に生えてくる永久歯がすぐに生えてこないことも多くなりました。また、15年ほど前から、立川市内の小学校の歯科検診も担当していますが、矯正治療をしないできれいに歯が並ぶお子さんは1,2割以下になってきています。
そして、当クリニックで矯正治療中のお子さんも、永久歯の一番奥の歯、第二大臼歯がまっすぐに生えてこないケースが多くなっています。
このように、この20年ほどの間、年々お子様方のあごの成長が少なくなり、歯並びも、歯の重なりが強くなり、噛み合わせの状況もきちんと噛み合っているお子さんが少なくなってきているように感じています。
良くない歯並び、問題のある噛み合わせ
良くない歯並び、噛み合わせとして、大きく分けて以下の4つがあります。
矯正治療が必要かどうかは、その状態の程度によりますが、機能的に“よく噛めない”状況であれば、お子様の場合、機能改善や、顔貌の変化を防ぐために矯正治療をおすすめしています。
1. 叢生(そうせい)歯の重なりがある
前歯の側切歯が内側に入ってしまい、犬歯が飛び出している(いわゆるやえ歯)ケースが多く見られます。小臼歯が内側に入っている場合もあります。
2. 出っ歯(上顎前突)
上の前歯が前に出ている状態
3. 受け口(下顎前突)
下の歯が前に出ている状態
4. 上下の歯(前歯)が噛み合わない状態
開咬(かいこう)といいます。
歯並びの原因
歯並びには原因があります。
そして小学生以下のお子様の場合は、ほとんど環境的原因です。
遺伝的原因(先天的原因)は背の高さ同様、小学校高学年以降に出現します。
環境的原因には以下が挙げられます。
・呼吸の問題(鼻の通気度、口蓋扁桃、アデノイドなど)
・舌の癖(くせ)
・態癖(たいへき)
・咬み方、食べ物の嗜好
まず、呼吸の問題です。
最近のお子さんは、口呼吸のお子さんが多いです。
お口をぽかんと開けている状態です。
口を開けているのは、鼻で呼吸しにくい状況、たとえば、アレルギー性鼻炎、扁桃腺の肥大、アデノイドの肥大などが考えられます。
そして、この口呼吸により、舌も前方に出てきます。
口で息をしていると、舌を前に出さないと息ができないのです。
幼児期のお子さんのお母様方でよくお子さんを見ている方は、お子さんの舌が前に出ているのに気付いていることが多いです。
この“舌が前に出ている”状況は、正常の状況ではなく、変えていく必要があります。
理由は歯並びはもちろん、飲み込み(嚥下=えんげ)や発音といった重要な問題に繋がっているからです。
態癖(たいへき)はお子様の普段の生活習慣のなかで、歯並びに影響のあるもののことです。
代表的なものの一つに指しゃぶりがあります。
他には、唇を噛む、咬唇癖(こうしんへき)、爪咬みなどがあります。
さらに、睡眠時のうつぶせ寝、食事の際の顔の向き、姿勢などが挙げられます。
咬み方も、前歯でしっかりと咬むことが重要で(前歯の重なりがあるお子さんは、ほとんど前歯を使って噛んでいません)、お母様方がお子様に食材を食べやすい大きさに切るのではなく、前歯を使わせるように工夫していくことが大事です。
子どもの歯並びの最近の傾向
年代別にみますと
○2~5歳(子どもの歯=乳歯列期)
以前は5歳くらいになると、上の前歯の間に隙間できて“すきっ歯”のようになる状態が標準とされてきましたが、最近は滅多にみられなくなりました。
そして、前歯が重なっている状態のお子さんも多くなりました。
原因としましては、あごの成長が少ないのです。
対策は、“前歯で食べ物をかじらせる”ことです。おかあさん方は、つい食べやすく、おかずや野菜類を小さく切ってしまいがちです。少し大きめにするか、野菜などはスティック状にしてお子様にあげるようにしてください。
あと、下あごが前に出る“受け口”も多くみられます。
この時期はまだ、噛み合わせがしっかり決まらず、あごの位置も不安定なため、診断が難しいですが、普段、日常的に下あごを突き出すようにしている場合は注意です。
原因としては、まだ遺伝的なものは少なく、「うつ伏せ寝」とか、「ぶくぶくうがいの仕方」とか注意してください。「うつぶせ寝」は上あごの発育を抑え、下あごを前に出やすくするのでなるべく避け、「ぶくぶくうがい」は、水をお口に含んだときに左右のほっぺたと奥歯の間に水をためるようにさせてください。
さらに、“舌の機能”が良くなく、舌が上あごにくっつけられないのも原因ですが、4,5歳になれば、舌のトレーニングも可能です。
指しゃぶりによる、“出っ歯”は止めれば治るのでそれほど、心配はありません。
○6~9歳(永久歯交換期、犬歯が生えるまで)
ほとんどのお子さん方は前歯が4本きれいに並ばないで重なって生えてきてしまいます。
原因としてはあごの成長不足と歯並びのアーチが狭いことが挙げられます。まだ、この時期は遺伝的な原因よりも、環境的な原因が大きいです。
対策としては、“よく前歯で噛む”ことと、“歯並びのアーチを矯正的に広げる”ことです。この時期は小児矯正の始める時期です。
また、受け口傾向の強いお子さんも多くみられます。
実際に下あごが前に出たり、上下の歯が逆になっているお子さんもいらっしゃいますが、実際に上下で正常に噛んでいるように見えても、下の前歯が内側に倒れていると、今後、成長とともに下あごが前に出てくることが予測できます。
対策としては、舌が上あごにくっつけられずに下あごを前に押しているのが原因なので、舌の機能改善のためのトレーニングです。
○10~13歳(犬歯が生えてきて、最後の第二大臼歯が並ぶまで)
最近、上あごの犬歯が前の方に向かって出てくるケースが増えてきたように思います。これは、あごの成長不足であり、その分、歯の動くスペースが無くなっているためだと考えられます。
あとはいちばん奥の歯、(上下の第二大臼歯)が生えてくるのが遅く、さらに、前の第一大臼歯に引っかかって出られない場合も多くみられます。
上下の犬歯も、きちんと歯並びの中に、矯正治療をぜずに、きちんと並んでいるお子さんはあまり見られないように感じます。
このように、全体的に子どもの歯並びは悪くなってきており、これはあごの成長不足で、理由としては、“よく食べ物を噛んでいない”“舌の機能が良くない”の2つが最も大きなものだと考えられます。
立川の小児矯正歯科の近藤歯科クリニックはこの点を重視し、矯正治療中のお子様方に毎回お話ししています。
子どもの歯並びの矯正費用を少なくする方法は?
現在、子どもの矯正費用は、相場が80万~100万円です。
高いですよね?
おまけに学費、習い事、兄弟も何人か、と考えると気が重くなってしまいますね。
(ちなみに当クリニックでは平均40万です)
そこで、子どもの矯正費用を少なくする方法を考えてみました。
お子さんの歯並びは前述しましたように、遺伝的要因より環境的要因のほうが強いのです。
したがって、環境的要因を変えていけば良いのです。
たとえば、鼻の通りを良くしていく、口呼吸を鼻呼吸に変えていく。
舌のトレーニングをする。
日常の生活習慣で可能な範囲で注意していく。
食べものを前歯でかじって食べる習慣を身につけていく。
これらに気をつけていけば、重度の良くない歯並び、噛み合わせになることは、防ぐことができるケースも多くなると考えています。矯正治療をしないで済むところまではいかなくても、だいぶ程度が違ってくれば、費用も抑えられると思います。
ちなみに、当クリニックの小児矯正では、環境的要因を重視し、これに可能な範囲で取り組んでもらうことにより、矯正治療にかかる費用を少なくする取り組みをしております。
でも、理想的には、“小児矯正をしないで済む!”ことが理想です。
詳しくは“歯並びの良い子どもにするのには?”をご参考下さい
環境的要因をそのままにして、矯正歯科に丸投げすると、永久歯を抜かれて、費用も多くかかってしまいます。
子どもの歯並びでやってはいけないこと
1. 永久歯抜歯をしてもらう。
⇒なるべく、いや、抜かない方がいいでしょう。あごの成長発育を抑えてしまいます。
2. かかりつけで、持続的にかかっていても、歯の生え変わりの時期を把握していない。
⇒前歯の生える時期、それぞれの歯の生える時期は大体決まっていて、左右ある歯の片方だけ生え変わって、もう片方が生え変わらないのは注意!です。
最近は、先天性欠損(生まれつき歯の数が少ない)、過剰歯(逆に歯の数が多い)、位置異常、萌出方向が違う、場合も多いので、しっかり担当歯科医に説明を受けることが大事です。
さらに歯科によっては、子どもの患者さんが少ないと、見逃してしまう状況もあるので注意です。
3. おやつにスナック菓子、甘いものを多くあげる。
⇒むし歯の多発は“歯並び”以前の問題です。
その他:子どもの歯並びに関する情報
1. 子どもの歯並びと舌の癖って関係あるの?
歯並びは舌の動きによって決まります。
歯並びの良くないお子さんは舌の動きも良くないです。
詳しくは子どもの歯並びと舌の癖へ
2. 子どもの歯並びと噛み合わせについて
子どもの歯並びと噛み合わせについて、年齢別にまとめてみました。
詳しくは子どもの歯並びと噛み合わせへ
3. 子どもの歯並びと遺伝について
子どもの歯並びは従来は遺伝的なものが大きいといわれていましたが、
現在は、近年の環境、食生活の大きな変化により生まれてからの環境的影響の方が強くなっています。
詳しくは“子どもの歯並び”って遺伝?へ
4. 子どもの歯並びは環境的原因による影響が強いですが、環境的原因とは何でしょうか?
詳しくは子どもの歯並びと態癖へ
5. 子どもの歯ぎしりについて、歯並び的観点から考えてみました。
幼児期、学童期など、年齢によって違いがあります。
詳しくは子どもの歯並びと歯ぎしりについてへ
6. 子どもの歯並びの最近の傾向について
子どもの歯並びは、この10年劇的に変わってきたように思います。
乳歯列期、永久歯交換期など、年齢別にまとめてみました。
詳しくは子どもの歯並びの最近の傾向へ
7. 子どもの歯並びと指しゃぶりについて
子どもの指しゃぶりはすぐに止めさせるべきか、様子を見るべきか?
年齢によって違ってきますが、歯並びへの影響は?
詳しくは子どもの歯並びと指しゃぶりへ
8. 歯並びの良い子どもにするには?
子どもの歯並びは環境的影響が大きいということは、そうです!環境的なものを変えていけば、(変えられる範囲で)良い歯並びに出来るのです!
詳しくは歯並びの良い子どもにするには?へ
9. 子どもの歯並びの年齢的変化について
子どもの歯並びについて年齢ごとにまとめてみました。
生えるべき歯が生えてこない時は、早めにご相談ください。
詳しくは子どもの歯並びの年齢的変化へ
立川の近藤歯科クリニックは、お子様方のために、立川で最も信頼できる小児矯正治療をする歯科医院として、今後もスタッフ一丸となり全力で、皆様方のお役に立てるように頑張ってまいります。
細かいこと、何でもお気軽にご相談ください。