免疫力と歯周病
免疫力と歯周病について
歯周病は感染症ですが、身体の抵抗力によっても、大きな影響を受けます。
「歯科で言われたとおり、歯みがきをしているのに治らない」
「歯ぐきが腫れやすい」
「口内炎ができやすい」
など、これらは、体の抵抗力、免疫力が低くなっているためだと考えられます。
今、ブームになっている“免疫力”について考えたいと思います。
免疫学の世界的権威である、新潟大学教授の安保徹先生の「疲れない体をつくる免疫力」をもとに編集いたしました。
|免疫力とは?|
免疫力とは?
免疫力とは、病気に対する抵抗力のことです
人間の体は自立神経により、活動と休息に適した体調をつくりだし、コントロールされています。
そして、自律神経には交感神経と副交感神経の2種類があり、そのバランスが健康状態を左右します。
仕事が忙しく、強いストレスなどで、交感神経が優位に立った状態が長期間つづくと、本来、外敵を攻撃するはずの白血球中の“顆粒球”が過剰に増え、かえってみずからの体の組織を攻撃、破壊します。
一方、その対極に、緊張感のない、たるんだ生活などにより、副交感神経が優位に立った状態が長く続くと、白血球中の”リンパ球”が増えすぎて、さまざまな感覚が敏感になり、アレルギーを起こしたり、うつ状態になります。
いづれにしても、自律神経のバランスが崩れると、血流が悪くなり、体温も下がり、免疫力も低下します。
交感神経優位の状態について
交感神経は主に昼間働いていて、人が活動する時や、運動をしている時に活性化し、心臓の拍動を早くし、血圧を上昇させます。交感神経優位の状態になると、最初は血液中の酸素濃度が下がり、血糖値も下がり、軽い疲れを感じます。
次の段階では、体が重くなり、筋肉や、内臓のどの組織の一部が酸素・栄養不足になります。血流障害も起きて、肩などのこりがでます。
さらに進むと、酸素・栄養不足が深刻化し、肩・背中・腰などがこり、目の疲労や、顔などの吹き出物がでてきます。これが長期にわたると、炎症が始まり、組織が破壊されていきます。
肩・背中・腰の鈍痛、にきび、口内炎、歯周病、胃炎、便秘など。
さらに状態が悪くなると、高血圧、不眠、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、がんなどになってしまいます。
副交感神経優位の状態について
副交感神経は交感神経の逆で、おもに夕方から夜にかけて働きます。
人間が休む時や、食事をした時に活性化し、“のびのびリラックス”の状態ををつくりだし、心臓の拍動を遅くし、血管を拡張させ、呼吸をゆっくり安定させます。
副交感神経優位の状態になると、脈拍、血圧、血糖値が低くなり、「体を動かすのが億劫」になります。
次の段階では、血流も滞りがちで、無気力状態になり、少し動いただけでも「すぐつかれます」。
さらに進むと、筋力など体の機能が低下します。長期間立っていられなくなり、腰痛、肥満になる。心身、ともに、刺激に過敏に反応します。
これが長期にわたると、アレルギー性の反応、軽い炎症もでます。金属や虫刺さされへの過剰反応もあり、知覚過敏になります。
さらに状態が悪くなると、アトピー性皮膚炎や花粉症など、アレルギー性疾患が慢性化します。
疲労によって会社を休む状態にもなります。
免疫力を低下させる状況
以下、免疫力を下げてしまう、状況をあげてみました。
睡眠不足
「40代で夜更かしをする人」はがんになる!?といわれています。
睡眠の取り方によって寿命に差がでます。
消炎鎮痛剤の長期的な服用
肩こりは消炎鎮痛剤では治りません。「こり」「や「痛み」は回復反射であり、消炎鎮痛剤によって組織の反応を止めてしまうと、ますます回復が遅れるのです。 熱がでたときも、体は熱を上げて、リンパ球総動員でウイルスを攻撃し戦っているので、
できるだけ、解熱剤などは使わないほうがいいでしょう。
体を冷やす
冷房などで、体を冷やすと交感神経を緊張させ、全身の血流を滞らせます。 冷たい飲み物なども、体温を一気に下げてしまいます。
甘いものを多く摂る
甘いものの摂りすぎは、血糖値を急激に上げ、血糖値を下げる働きのあるインスリンの分泌を誘発し、今度は急激に血糖値も体温も下げてしまいます。
寝る前に飲酒する
飲み始めは副交感神経が優位になり、ボーッとなり寝やすくなるかもしれませんが、飲みすぎると、逆に交感神経を緊張させるので、目が冴えてしまいます。
免疫力を高める生き方
1.仕事の疲れは「仕事中に取る!」が基本
1時間に1回は休息をとる。
2.血流を回復させる習慣
血流を回復させ疲れを取るには、体を動かすのが一番です。その際のコツは仕事で続けがちな姿勢と逆の動きをすること。(デスクワークをしている人は立ちあがり、腕を上げて肩の筋肉を緩めるようにする。)
3.長時間パソコンを続けない
目の疲れは非常に危険です。目を酷使して眼精疲労がたまった時は、血圧が200近くまで上がっていることがあります。
1時間に15分は目と体に休息を与えるようにしてください。
4.自律神経を整える習慣
1時間に1回の休息の際に、深呼吸をします。 仕事に集中しすぎて、交感神経優位が続き、呼吸が浅く速くなると、やがて酸欠に陥り、疲れが生じます。こうした時は交感神経を刺激しなくてはなりません。
より効果的に刺激するには、たくさんの酸素を取り込むことと、吐く息よりも意図的に長くすることの2つが必要です。
この2つを兼ね備えた呼吸法が腹式呼吸です。
腹式呼吸は横隔膜を上下させることによって行う呼吸法です。
横隔膜の上下によって、腸が刺激されるので、副交感神経を優位にします。
やり方は、まず、背筋を伸ばして胸を広げ、下腹部分をへこませながら、ゆっくりと、「これ以上、吐ききれない」というところまで息を吐きます。
息を吐ききると、自然に息を吸う流れに入れます。
そして、意識的にお腹を膨らませながら息を吸います。
吐く時間が、吸う時間の2倍以上になるようにしましょう。
吸う時は鼻で、吐く時は口をすぼめて量をコントロールすると、うまくいくでしょう。
リラックスでなく、逆に集中したい時や気力を出したい時は、交感神経を刺激する胸式呼吸をするとよいでしょう。
胸式呼吸は、肋骨の動きによる呼吸法です。まず、姿勢を正し、両手を軽く握り、顔の横に持ち上げます。その状態のまま、ひじを左右に開きながら口で「スッ」と勢いよく息を吸い、胸を張って空気をため込みます。
一呼吸おいた後、フッと肩の力を抜くと、自然にひじが下がりますので、その時に息を吐きます。これを5回ほどやるとよいでしょう。頭に血液が巡り、意識がはっきりしてきて、心身共にシャキッとしてきます。
5.週に1日は定時に帰る
夕方以降は、副交感神経が優位になり、1日の疲れを洗い流す時間なのですが、ここで、さらに働き続けると、1日の疲れを取ることができないばかりか、昼間よりもさらなる疲れを積み増すことになり、典型的な疲れをためる生き方になります。
夕方以降はできるだけ仕事をしないことが、いい仕事を長く続けるために、ぜひ必要なことなのです。
6.いつもより30分早く寝る
30分昼寝をして、30分早く帰って寝ることにより、睡眠時間を1時間増やしましょう。寝不足になりがちな人は、15分でも30分でもいいので、眠れる時にすぐ眠ようにしてください。
7.免疫力を上げる食べ物
きのこ料理を1日1品とること
きのこは食物繊維が豊富であるだけでなく、βーグルカンという免疫力を高める成分が多く含まれています。
海藻を主体に、ぬめり成分を持つ食品を積極的にとること
海藻のヌメヌメとした成分は、腸内細菌叢のバランスをよくして、腸の免疫を高める効果が大です。
抗酸化力が強い食品をとること
緑黄色野菜やごまなどがありますが、ここで特におすすめしたいのは、抗酸化に役立つ多種類のビタミン・ミネラルを含むにんにくです。
納豆やヨーグルト、漬物などの発酵食品をとること
発酵食品には、ガン細胞などを攻撃するのに非常に重要な役目を果たすヘルパーT細胞のTh1細胞をふやす効果があるのです。
8.疲れが取れる睡眠を心がける
太陽と共に生活することを心がければ、自然にリズムが戻ってきます。
夏と冬では起床時間を変える。
寝酒は眠りを浅くするので、できるだけやめる。
9.深くぐっすり眠れる入浴法
入浴は湯船に浸かり、しっかりと体温を上げ、汗をかいたほうがよく眠れます。この汗は、体の中のさまざまな化学物質や活性酸素などの毒素が含まれたいて、これを排泄すると、体の調子がよくなっていきます。
10.食べ物をゆっくり味わう
「体によいから」といって、おいしいと感じられないのに、無理をして食べ続けるのはよくないのです。無理のない範囲で、除々に取り入れることが大事です。
食事の際は、ゆっくりと時間をかけて、よく噛んで食べましょう。
よく噛むことで、副交感神経が刺激されます。
11.口呼吸から鼻呼吸に変える
鼻が呼吸のための本来の器官であり、口は代役にすぎません。
口呼吸を続けていると、のどの扁桃部が乾燥し、温度が下がります。
すると、扁桃のM細胞からとめどなく細菌が血中に入り、白血球内に取り込まれます。
生きたまま細菌が潜り込んだこの白血球は体じゅうに運ばれ、さまざまな器官の細胞内感染を起こし、その結果、さまざまな病気にかかりやすくなってしまうのです。
白血病や悪性リンパ腫も口呼吸と関係が深く、ほかのさまざまなガンも免疫力の低下によって引き起こされます。
また、口呼吸は花粉症や喘息、アトピー性皮膚炎、関節リュウマチなど、免疫系の乱れによる病気の発症にも大きく関係しています。
◎免疫力アップ鼻呼吸のやり方
1)背筋、首筋を伸ばし、あごをひいて、足を肩幅よりやや広めに開いて立つ。
この状態で両手を上げて、くちびると肛門を閉じる
2)お腹をへこませて、横隔膜を引き上げるように鼻から大きく空気を吸い込む。
くちびるは閉じて、上下の歯の間は少しあけておく。
3)お腹の力を抜き、横隔膜を下げるように鼻から大きく息を吐き出す」。
このときも、くちびるは閉じたままで、歯は軽く噛みしめる。
12.大自然のメカニズムに合わせて生きる
交感神経優位になると、知覚が鈍くなり、副交感神経優位になると知覚が敏感になります。
交感神経優位が続いて知覚が鈍くなることは、人間が物事に集中して活発に活動するためのは、合理的な状態でもあります。
しかし、交感神経優位の極限状態が続いてしまうと、神経伝達物質が抑制され続け、知覚も思考力も鈍ったままで、体に深いダメージを受けていても、そのまま走り続けることになります。
これが極地までいくと、人の話が聴けなくなり、何を言われても、受け入れて考えることができなくなります。
過労死の直前などには、人はこのような状態になり、「もう休んだら?」という家族の忠告を聴ける状態ではなくなっていることが多いのです。
自立神経は大自然と共に変化しています。人間の体は、長い人類の歴史の中で、太陽と共に起き出し、日中に食物を摂る活動をして、太陽が沈むと寝る生活に適応するようにつくられています。
自律神経は天気の影響も受け、晴れると交感神経優位になり、曇りや雨になると、副交感神経が優位になります。
正確に言えば、、自律神経には気圧が影響するのです。
したがって、季節でも変化し、夏は気温が上がり、気圧が低くなるので、副交感神経優位になり、冬は気圧が高くなるため、交感神経優位の季節となります。
こうしてみると、私たちの自立神経は、大自然の大きなリズムと共に変化していることがわかるでしょう。
自立神経の変化につられて、エネルギー代謝も免疫も変化していきます。
「体のここが痛い」「この症状を早く何とかしたい」という体の一部分のみしか見ないのではなく、、もっと大きな視点で自分の体を見詰め体の声を聴いてあげましょう。
大自然のリズムと、大自然のリズムに連動した自分の体の精巧なシステムを、統合的に見ていきましょう。そうすれば、つらい症状のみに集中してピリピリしていた気分がほぐれ、おおらかな気持ちになれます。
つらい症状を引き起こす本当の原因も見えてきて、正しい解決法が見えてくるでしょう。